「少年法」改正法案に対する意見書送付
2006.1.20
衆議院法務委員各位様
参議院法務委員各位様
特定非営利活動法人   
東京都地域婦人団体連盟
会 長  川 島 霞 子

「少年法」改正法案に対する意見書
 昨年から懸案となっている「少年法」改正が具体化されようとしていることについてたいへん憂慮しております。少年犯罪は厳罰化で防止できると考えることが間違いであることは事実が証明しています。少年を取り巻く環境・教育・その育成過程などを懸案してその子の心の傷や障害を受け止めて福祉的、教育的援助や専門家によるケアを与えることこそ大切と考え、下記の意見を述べさせていただきます。

1. 警察官の調査権限の拡大強化ついて最も憂慮しています。
 非行少年に対する警察官の聞き取り調査ですが、大人ですら心理的重圧のあまり犯していない罪まで認めてしまう例も多いと聞いています。このような危険性を14歳未満の子どもにそのまま持ち込み、弁護士も付添い人もいない密室で警察官に厳しく取り調べられたら、小学生や中学1年生がどんな状態になるか容易に想像することができます。
さらに「ぐ犯少年」に対する警察官の調査権限の付与、この影響は深刻と存じます。「ぐ犯」の限界は曖昧で「改正法案」は「ぐ犯少年である疑いのある者」を調査の対象に入れていますから、事実上すべての子どもが警察官に監視される恐れも出てきます。
また警察官は自らの判断で少年、保護者、関係者を呼び出し、質問することができるようになり、さらには学校や福祉団体、その他公私の団体に照会して、必要な事項の報告を求めることもできるようになります。学校現場は子どもや保護者の情報をどこまで提供すべきか難しい問題が生じ、ことによっては教師と生徒との信頼関係も大きく損なわれ、教育の根幹にも重大な影響を生じると思われます。

2. 現行法は14歳以上とされている少年院送致を14歳未満とすることは反対です。
 11、2歳のまだ未熟な少年がたとえ重大事件を起こしたとしても、十分な検討もされないまま少年院へ送られる危険性は、思っただけで恐ろしいと思います。児童自立支援施設で充分に心のケアを受け、先の長い人生での更生をはかることが妥当であると思われ、少年院送致はその貴重な機会を奪うこととなります。

3. 保護観察中の少年に対する措置について
 保護観察中の遵守事項違反についても、違反だけで少年院送致にすることは、人権保障及び適正手続きの上からも許されることではありません。保護観察中の少年にもさまざまな事情があります。まず犯罪人ありきの対応は保護司と保護観察中の少年との信頼関係を損ない、少年の社会や人への信頼も消失し、社会復帰、更正への道まで遠くするのではないかと思われます。

 以上少なくとも三事項は法改正は行わず、現行のままで充分であると存じます。

 少年非行の背景には、親の子育てに問題があるといわれています。非行少年の親自身が成育過程で親の暴力を受けていたケースや、子育てのすべを見出せない未熟な親が悩み苦しんでいる例も多くあり、学校、児童相談所、福祉事務所、警察などに何度も相談に行ったけれど、適切な対応をしてもらえなかったなど親から訴えも少なくないとのことです。
 まず、少年非行防止、非行少年の立ち直りのためには、国や地方自治体が大きな政策の転換をしなければならないと存じます。親の子育てを身近で支援する態勢(児童精神科医、カウンセラーなど配置した支援センター)の整備を早急に進めて欲しいと存じます。
 将来ある少年たちは、自らを受け入れ信頼されることではじめて他人を受容し信頼することができ、対人関係能力や社会適応能力を身につけ、一人前の社会人となって行きます。
 また現在犯罪被害者の救済が強く叫ばれていますが、現在、国による被害者救済の施策はほとんどなされていない状況です。これも大きな課題ですが、それとともに、被害者やその家族の受けた心の傷は、加害者を厳罰に処しただけではなかなか癒えないと聞いています。加害者が真に悔い改め、謝罪し立ち直って更正したとき、はじめて被害を受けた人たちの心の闇が晴れて行くと聞きました。この被害者救済の観点からも厳罰でなく立ち直りを願うものです。
 私たち東京地婦連は、子を生み育てる母親の団体として、子どもたちの立ち直りと幸を願っております。
特定非営利活動法人東京都地域婦人団体連盟
会 長  川 島 霞 子
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