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訴訟規定の「他の適格消費者団体による確定判決等が存する場合、同一事件の請求は原則としてすることができない」という注意書きの削除を求めます。
消費者団体訴訟制度について議論を重ねてきた国民生活審議会消費者政策部会の報告書では、「ある適格消費者団体が提訴した差止請求事件における判決の既判力の範囲については、当該事件の当事者限りとし、他の適格消費者団体には及ばないとすることが民事訴訟法の基本原則に整合的である」とし、また、「一定の不適切な訴えの提起自体を認めない仕組み」の必要性を指摘していました。しかし、今回の骨子によれば「同一事件の請求は原則としてすることができない」こととなり、「一定の不適切な訴え」ばかりでなく、全ての訴訟に及ぶこととなり、考え方が全く変わっています。
第20次第2回国民生活審議会消費者政策部会では多くの委員から、この項目についての疑問が出されました。その発言にもあったように、時代の変化の流れが速い中で判例が変わることは十分考えられますし、先駆的訴訟で敗訴しても、その後多くの被害が出て、あらためて実態がわかってくるということも考えられます。一度の判決が何年にもわたって効力をもつことで、悪質な事業者にお墨付きを与えることになりかねず、消費者被害の救済・予防とはなりません。部会でこれだけ多くの意見が出されたことを真摯に受け止め、制度導入の主旨とも反するこの注意書きについて削除を求めます。 |
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管轄裁判所は、営業所所在地のみならず、被害が実際に発生している地でも、訴訟が起こせるようにすることが必要です。
管轄裁判所はとりまとめから一歩広げ、事業者の営業所等まで広がりました。しかし、営業所所在地とは全く離れた地域での営業や、ネット販売・通信販売事業では営業所などはもたない等、消費者契約をめぐる状況は大きく変化してきています。実際に消費者が被害を受けている地域での提訴を認めることが必要であると考えます。 |
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差止の対象に「推奨行為」も含めることが必要です。
いわゆる「推奨行為」による被害はすでに多く存在しています。モデル約款を使用する個々の事業者に対して差止訴訟ができるとはいえ、その判決の及ぶ範囲はその事業者に限られ、他の事業者がその判例をどう受け止めるかはその事業者の判断にゆだねられることとなります。「推奨行為」を差止の対象に含むことによって、消費者被害の拡大防止につながると考えます。
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適格消費者団体が消費生活相談情報等、とりわけ省庁・自治体が持つ個別情報を十分に活用できるようにすることが必要です。
PIO-NET情報を適格消費者団体へ提供するとしていますが、国の他機関にもたくさんの消費者被害情報が集められています。より広く多くの情報を入手することによって、適切な交渉や訴訟が可能になります。よって、「個別情報を含む消費生活相談情報(PIO-NET情報)等」と修文すべきと考えます。
*個別情報とは、例えば、消費生活相談カードの個人氏名を除く情報等を想定しています。
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法律は成立後短い期間内に見直しが必要だと考えます。
消費者団体訴訟制度は今までにないまったく新しい制度です。今回、検討時間の不足により、取り残された課題、訴訟制度の円滑な利用のための課題等についての検討が必要と考えます。
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