第28期東京都青少年問題協議会答申素案への意見
2009年12月10日
東京都青少年・治安対策本部総合対策部
青少年課計画調整係 様
特定非営利活動法人 東京都地域婦人団体連盟
会長 川島 霞子

 私ども特定非営利活動法人東京都地域婦人団体連盟(略称 東京地婦連)は、昭和23年に創立以来、60年余にわたり青少年の健全育成を大きな目的の一つとして活動を続けてまいりました地域女性団体です。
 このたび公表されました第28期東京都青少年問題協議会答申素案「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」の中で、「インターネットが有用で便利なコミュニケーション手段として、青少年に広く浸透し、また、その接続手段として携帯電話等が多く使われている」と現状分析し、また、インターネット上の違法・有害情報が青少年に与える影響への懸念を示されていることに、共通の問題意識をもっております。
 しかし、今回の素案に提案された具体的方策には、憲法によって保障された表現の自由や通信の秘密を侵す懸念がありますので、下記の通り、意見を申し述べます。

1. 素案p3以降、インターネット上の現状と課題として、青少年自らが加害者となる事例が列挙されていますが、本来、ネット上の悪意の大人によって受ける青少年の被害こそ、対策を急ぐべきものではないでしょうか。本来、青少年のリテラシーの向上が第一義です。道具としての携帯電話への規制や、フィルタリングへの過度な期待は、かえって、青少年の判断力を弱めることにもなりかねません。時間がかかるようでも、青少年一人ひとりの力の向上をめざして、様々な努力がされるべきであると考えます。
2. p25、9行目「子どものネットへのアクセス履歴を保護者が子どもを通じずに確認できる機能」は、あきらかに通信の秘密を侵すものです。児童の権利は、大人の権利と同等に守られるべきであり、親子間の話し合いの中で、履歴の確認は行われるべきです。
3. 現在、青少年インターネット環境整備法のもと、民間や政府が役割を担って、青少年の健全なインターネット環境を守る努力を続けていますが、その基本は「民間の自主的・主体的取組の尊重」です。しかし、今回の素案p26、4行目「ネット・ケータイに絡んで青少年が被害やトラブルに巻き込まれた事案において利用されたサイトや、当該青少年の使用していた携帯電話等のフィルタリングの状況について、都が相談窓口等において把握し、確認できた場合には、その利用状況を都が公表することにより、保護者へ警鐘を鳴らすとともに、当該サイト運営事業者やフィルタリング開発業者、第三者機関等に対して基準への反映等の社会的責務を果たすように促す」は、結果的に第三者機関の基準策定に東京都が影響を及ぼす仕組みとなり、大きな問題をはらんでいます。(p28(エ)も同様)
4. p31、15行 「教育・啓発の内容や方法等について、東京都が具体的な基準や指針を定め、事業者等の活動における水準の確保に努める」は、教育内容への過剰な関与とならないよう、配慮が必要です。
5. p33、25行 「事業者においては、その質とともに提供機会の充実を図る必要がある」としているが、加えて、学校側が積極的に出前講座を受け入れるよう、東京都としての環境整備が必要です。
6. p52 19行「『暗黙のルール』をあらためて再認識し、再構築するとともに、人と人とのコミュニケーションの中で、特に『共通感覚』の形成途上である青少年のみならず、可能な限り多くの個人が、ネット・ケータイ時代の「『共通感覚』の形成に参加してもらうよう努めることではないだろうか」とありますが、社会のモラル、ルール感覚は、あくまでも多様性の中で育まれるもので、「暗黙」に一つの感覚にまとめられるべきものではありません。私たち大人は、様々な考え方をもちながら、青少年を健全に育成するために、青少年の権利をきちんと守り、それぞれの立場で努力するべきものと考えます。
7. 今回の素案にはたくさんの意見が寄せられるものと考えます。どのような立場の方がどのような意見を寄せたのか、個人の方を除き、法人からの意見は、詳細にわたって公開されることを望みます。

以上
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