2004年1月9日
アメリカ合衆国
アン・M・ベネマン農務長官殿
特定非営利活動法人 東京都地域婦人団体連盟
会長 川 島 霞 子
「米国産牛肉の輸出に関するステートメント」ならびに
「BSEに対する追加の防御対策」について要望

 私どもは発足後55年あまりになる、日本各地に会員を擁する「全国地域婦人団体連絡協議会」(会員数500万人)の東京の組織です。活動範囲は多岐にわたりますが、長年「食をめぐる消費者問題」に力を注いでまいりました。
 特にわが国で発生したBSE問題については、行政当局に対し発生に至った原因の追跡を求めるとともに、機構改革の必要性や「食品安全委員会」のあり方について要望を行いました。
 また安全性の確立のために食肉の解体時の検査体制強化や、トレーサビリティの導入、食肉表示の公正競争規約改正など、いずれも科学的裏付けが大切であるとの認識に立って提言してきた次第です。
 最近では、昨秋BSEの特定危険部位が「食品安全委員会」で取り上げられ、背根神経節などに拡大された動きにも関心を持ち、見守っているところです。
 このたびのワシントン州におけるBSE発生の報道に接し、あらためて牛肉の安全性問題が貴国の消費者に与える衝撃の大きさに思いをはせるとともに、世界の食卓、とりわけアメリカ産牛肉の輸入額が18億ドルに及ぶわが国への影響、消費者の不安感の大きさにがく然としております。
 日本の家庭で消費する食材としてのアメリカ産牛肉はもとより、32兆円といわれる外食市場(テイクアウトや惣菜などを含む)に原材料として供給される大量のアメリカ産牛肉についても、同様に安全性の検証が必要であるからです。
 以上のような観点から、昨年末に出された標記ステートメント(大使館)ならびに追加の防御対策(ベネマン農務長官)について、消費者の立場より下記の点について再検討を要望いたしますとともに、貴国よりの輸入について日本の消費者として納得がいく対策が必要であることをあらためて申し添えます。

1.  ステートメントにおいて「可能な限り迅速な通常貿易の再開を望み……日本政府当局と密に連絡を取りたい」とあるが、科学的な安全性が確立されることが前提であり、消費者不在の施策で将来に遺恨を残さないようにしていただきたい。
2.  追加の防御対策の中で一部のBSE検査対象品のほかに、先進的食肉回収システムを使用している施設では、製品留置が可能とある。このように限定されていることは製品への信頼性を欠くことにつながる。先進的食肉回収システムの全米での展開が不可欠であり、またこのシステム自体のモニタリングの徹底が重要と思われる。市場流通品の安全対策を講じていただきたい。
3.  検証可能な全国的動物特定システムを早急に実施していただきたい。トレーサビリティを導入することで出生地の特定も可能となる。また、全頭検査体制の実現を望む。
4.  特定危険部位の拡大、圧搾空気注入の慣例禁止、機械式食肉除去法の禁止、ワシントン州の一頭の出生群の追跡調査、以上の方針は確実に実行に移される必要があり、単なるアドバルーンにならないようにしていただきたい。
5.  日本でBSEと診断された中に、30カ月齢未満のものが2例(23カ月、21カ月)ある。このようなケースが発生している以上、両国で共同研究を行い、「30カ月齢以上」という基準の再検討を要請したい。