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■2010年11月15日付
平和への思いをどうしても残したい
「戦争を語りつぐ」DVDと体験文集 完成を祝う会
 
第58回全国地域婦人団体研究大会に参加して
東京都消費者月間・くらしフェスタ2010
コミュニケーションの輪を広げながら
メインシンポジウム 池田香代子さんが考える責任ある消費行動
地域ニュース

■平和への思いをどうしても残したい
 「戦争を語りつぐ」DVDと体験文集 完成を祝う会
DVD「女たちの戦争体験」を見る
 DVD「女たちの戦争体験」と文集「あなたに伝えたい私の戦争体験」の完成を祝う会を10月27日、全国婦人会館で開きました。東京地婦連の会員、制作費の賛助寄付で応援してくださった皆さんら50人が集まり、映像を見ました。「女性の視点で作られた作品に感銘を受けた」と多くの参加者から感想が寄せられました。今回は戦争を仕掛けた側の銃後の苦労の証言でしたが、仕掛けられた側の人びとの苦しみや悲しみを忘れてはいけないことを再び思い起こし、次世代には戦争のむなしさを伝えなければならない。戦争が歴史ではなく、生活の場にあったことを感じてもらおう。それには小さな単位でもよいからこのDVDを上映して戦争を知らない世代に伝え、二度と戦争はいやだという思いを伝えていきたいという会になりました。
伝えたい気持ちがあれば、子どもたちに伝わる 秀高賢治監督

制作過程を語る秀高賢治監督
 作品完成のお礼のあいさつで川島会長は、皆さんの力がなければ完成しなかったこと、監督をはじめ桜映画社のスタッフに、心から感謝の意を表しました。
 「戦後65年たち、このあと15年もすれば、戦争を知る世代はほとんどこの世からいなくなる。今ここで若い人たちに何か残したい。平和への思いをどうしても残したい。思いを重ねることがこうして作品となったことに、お礼を言いたい。みなさん、ありがとうございました」
 戦争を知らない世代の秀高賢治監督は、「父は戦争に行ったが、その体験は一度も口にしないで亡くなった。一度聞いておけばよかったと後悔している。そんな思いをもって、この作品を作った。一人1時間ほどインタビューをしながら、戦争の体験を収録していったが、戦争の記憶を思い出すのも大変だった」
 「だれかがやっているから、自分の戦争体験は語らなくてもいいと思っているかもしれないが、人それぞれ、ちがう体験がある。そのことを伝えたいと思う気持ちがあれば、子どもたちに伝わる。東京大空襲の体験もそれぞれに違う。大橋セツ子さんは目に浮かぶように話された。子どもたちが何かを感じ取ってもらえたらいいと思う。インタビューにはそういう力がある。多くの子どもたちに見てほしい」と述べました。その大橋さんは、5月に旅立たれました。

平和への強い意志を感じた

50人が参加して歓談しました
スタッフのみなさん
 制作費賛助に協力し、この会に出席者された方は、「小さい頃の記憶だけれど、どこか残っている」と北朝鮮からの引き揚げの話をしました。「38度線で土砂降りの雨の中で川を渡った恐怖、そこで兄弟を亡くし、不安な難民生活は日本に戻ってからも、パニック障害として残り、外にも出られなかった」。
 「子どもは何も知らない、戦争で子どもたちがどれだけ死んだか、歴史の中で忘れ去られている。戦争は絶対反対です!」と言い切る女性の言葉に、平和への強い意志を感じた一瞬でした。

身近な感じが心にしみてくる

 戦争を遠い昔のことと感じている二十代世代は、インターネットの世界が広がる中で、青少年の不健全情報の制限から表現の自由について疑問を持ち、東京地婦連に関心を寄せたという彼女は、「これまで生の声を聞くのはほとんどなく、今回は直接、生の声は感情が体に入ってくる。身近な感じが心にしみてくる。歴史ではなく、生活として分かった」と感想を述べました。
 私たちはこうして伝えてくれた人たちのことを思い、知らない世代が次の世代に伝えていくことができるよう、証言の記録を普及させていく大切さを共有しました。
 完成したDVDと文集は、子どもや若い世代に作品を観賞してくれるグループや団体に無償で贈ることにしています。どうぞ東京地婦連事務局まで、お問い合わせください。

改めて思い起こす平和の尊さ

 作品は7人の会員の体験から構成されています。戦時中の灯火管制下の暗い部屋で空襲警報におびえながらも雛人形を欠かさず飾ってくれた親への思い。集団疎開ではなく、家族で縁故疎開をしたら「非国民」といわれた子どものころの記憶。勤労動員では毎朝軍人勅語の斉唱に疑問を抱いたが、逆らえなかった。
 東京大空襲で逃げ延びられたのは、橋に向かう人たちと反対の方向に走り、花やしきのお化け洞窟に逃げ込んで助かったけれど、吾妻橋の下は死体でいっぱいだった。毎日、そこを通るしかなかった。
 食糧難と農家へ行く買い出しの苦労。東京大空襲の2日前に自宅出産して難を逃れたが、食べ物もろくにない中で、何とか母乳で生き延びた話。
 終戦の日の8月15日に、新婚3カ月の夫は遺書を残して軍の仕事に出かけたが、自決せず帰ってきてくれた。
 終戦から2年たってシベリアから届いた夫からの手紙、抑留生活から帰還し8年ぶりに再会した夫は、体験を語りたがらず心の闇みたいなものがあったと語る、シベリア抑留の夫を持つ妻。
 戦時下の女性たちのささやかな暮らしぶりが、戦争に飲み込まれていく世相となって感じ取られる映像で、観るものに戦争のむなしさや平和の尊さをあらためて思い起こさせます。
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■第58回全国地域婦人団体研究大会に参加して
 10月7・8日に佐賀県唐津市で全地婦連研究大会があり、東京地婦連から二人が参加しました。JALに乗り福岡空港には約1時間半で到着しましたが、そこから目的地の唐津まで各駅停車の列車しかなく、2時間近くかかり、驚きました。しかし会場の唐津シーサイドホテルは海岸にそびえ立っており、眼下に寄せる波のしぶきを見、かなたに宝当島(参詣すると宝くじが当たるといわれている神社がある)などのいくつかの美しい島が見えます。到着後すぐ分科会が始まり、第3分科会(共生社会の確立)に出席しました。助言者は、大草秀幸佐賀県立男女共同参画・生涯学習センター館長と中嶋玲子前福岡県男女共同参画センター館長です。


競争よりも調和を 共生社会へチェンジのとき

 はじめに大草さんは「国際的にし烈な技術革新と市場獲得競争が続いており、この競争社会から仲良く楽しく暮らす『共生社会』へチェンジするときを迎えている。雇用の悪化や所得の目減りによる生活不安の解消が急務だ。競争よりも調和を大切にし、利益を共有して豊かさを分かち合う社会こそ『共生社会』と言える」
 「オバマ大統領は、原爆投下に関し謝罪すべきとはいえない。しかし核兵器廃絶を目標とすると言ったことにより、『共生社会』の不安解消に力を尽くした」と述べました。
 中嶋さんは「ハンディキャップがあり、最初から競争の場に参加できない人、また参加するか否かの意志を表明することすら困難な人も、人間として尊厳を持って生きることができる態勢を支援しなければならない。それが共生社会だ」。

尊厳もって生きる
 その共生社会づくりのために、婦人会として何ができるかみんなで考えました。

奉仕の原点に迫る
 8日は唐津市民会館に1300人が集まり、全体会がありました。特別企画は喜多悦子日赤九州国際看護大学学長の講演です。
 佐賀で生まれた日本赤十字社の生みの親である佐野常民、赤十字の理念と組織を発想したアンリ・デュナン、近代看護の祖フローレンス・ナイチンゲールの業績について述べ、奉仕の原点に迫ります。
 偉人の業績に感動し、奉仕すべきことが多いと知りました。
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■東京都消費者月間・くらしフェスタ2010
 コミュニケーションの輪を広げながら
 10月は東京都消費者月間ですが、消費者団体と東京都が協働して事業を行う「くらしフェスタ2010」の、二つのメイン企画「見て、聞いて話そう! 交流フェスタ」が15・16日に新宿西口イベント広場で開催され、2万6000人が来場しました。27日の明治安田生命ホールのシンポジウム「池田佳代子さんが考える|責任ある消費行動」の講演会には、265人が参加しました。メイン企画の終了後も地域会場企画や特別企画、参加型見学会などが、来年まで予定されています。コミュニケーションの輪を広げながら、消費者問題への意識の高揚と消費者の権利について広く都民に対し啓発活動を行っていきます。
後期高齢者医療制度で対話弾むパネル展示
東京地婦連の展示ブース
展示パネルは「後期高齢者医療制度」
消費者被災防止のコントも
「消防署の方から来ました」稲葉さんも舞台に

 交流フェスタでは、52のブースで展示、販売、体験コーナーが並び、ステージでは音楽や参加団体による省エネ落語、消費者被害防止コントなどのパフォーマンスやミニセミナーなどで情報発信が行われました。
 出展団体が昨年より増え、ブースは食、環境、くらし、消費者被害防止、安全のグループに分け、来場者により多く立ち寄ってもらうために、クイズラリーで理解を深めてもらいました。
東京地婦連は中央ステージ前
 東京地婦連は中央ステージの前あたりに、後期高齢者医療制度についてのパネルを2枚展示し、クイズラリーの用紙を片手に立ち寄る来場者と機関紙「婦人時報」を配りながら、活動の紹介や高齢者医療制度の問題について対話が弾みました。
 中央ステージの前は来場者も多く立ち寄りますが、マイクの音量が直接響いてくるので、大声でのやりとりとなって、当番の役員はのどをからしていました。
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■メインシンポジウム
 池田香代子さんが考える責任ある消費行動
熱い思いを秘めて静かに語る池田香代子さん
 27日のメインシンポジウムは「『世界がもし100人の村だったら』‐池田香代子さんが考える責任ある消費行動」の講演とミニコンサートです。池田さんはまず、生物多様性COP10首脳会議が名古屋で今日から始まったと切り出しながら、「日本は固有種の割合が高く、世界でも豊かな生物多様性のあるスポットと認められているけれど、菜の花やタンポポの外来種は日本全国に生息するようになってしまった。身の回りの生態系のバランスを考えることは、私たちの消費行動も同じで、世界に影響を及ぼすことにつながる」として、本題に入りました。
100人村基金創設 難民救援へ寄付
 「100人の村」の出版は、その印税を中村哲さん(ペシャワール会)のアフガニスタンの緊急募金にしようと思い立って始めたそうですが、出版はベストセラーになり、食べ物編、こども編など4作が世に出ることになりました。
 そこで「100人村基金」を創設し、難民救援のNGO団体などに寄付しています。池田さんは「政権交代しても難民対策は変わらない。100人村基金の寄付は、難民対策に十分税金を使われていないなら、自分たちで難民を支援する団体に寄付をして支援していこうというもの。目的がはっきりした使われ方をしていると実感し、そこには新しい公共が生まれている」といいます。
 このような寄付には税制優遇措置があってもいいのではないかとの思いを語り、NPOを支援する選択的納税制度をつくり、「社会を厚くすること」が大切で、それは市民パワーを発揮することになると基金創設の熱い思いを話しました。

ネパールの学校 壁に残る銃弾
 「途上国で読み書きができると、特に女の子に小学校に行ってもらうことは失業を減らし、飢餓の問題も解決する」、池田さんはそう語って、WFP(国連世界食糧計画=戦争や災害時の救援として食糧を援助する組織)がネパールで行っている学校給食プログラムの取材に、ネパールへ出かけました。
 村の学校は国や政府からの援助は全くないところでみんなの力で建設し、運営していますが、政情の不安は、教室の壁に残る銃弾の跡からわかるという。村民たちは命がけで学校を守りめげずに励み、能力を出し合っていることを肌で感じた。調理室を作りたいという希望で、100人村基金は寄付をしました。
会場ロビーでは池田さんの本を販売
 学校で給食があれば、1食が助かり、親たちは学校に何とか行かせることができる。読み書き計算ができれば、考える力がつき貧困と飢餓から立ち上がることもできる。特に女性が読み書きできることは、母体の保護や人口調節へもつながる大事な1歩になる。
 しかし女子は家庭労働に使われ、いずれ家を出るのだから教育は必要ないと大人の理解は乏しい。100人の村「こども編」にある「少女ラマンヤ給食物語」は、そんな中で学校に行く少女の訴えです。

遠回りでも平和のために
 「私たちが手にする安価で満足している衣類は、学校にも行かず農薬の畑をはだしで働く児童たちでつくられた綿花からできています。遠くから運んだもの、出来上がったものは豊かで便利なくらしを作り出している」
 「遠回りのようだが平和のために日々の暮らしの中から、こういった問題に気づき、責任ある消費行動をこうしたところからも、考えてほしい」と、静かな口調の訴えに、大きな拍手がわきました。
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■地域ニュース
芋掘りに協力
わか草婦人会


 「晴れ」の特異日の文化の日、期待通りの快晴に恵まれ、堀切6丁目子ども会主催の芋掘りに、婦人会も協力して参加しました=写真。
 朝8時、約30人で大型観光バスに乗り、一路埼玉県川越市へと向かいました。祝日でも渋滞はなく、1時間半ほどで目的地のあらはた農園に到着しました。
 新興住宅地の一画に位置し、というより周辺の農地の宅地化が進んでいる印象を受け、少し気がかりでした。そんな私の心配はさておき、係の方に畑へと誘導されて収穫のコツを教えていただきました。
 「土から芋を抜くときは横に引かず縦に引くように」と。「そうか、芋づる式だな」と合点し、大収穫の期待とともにていねいに掘って抜くのですが、ポキリ、ポキリとつるから芋はもぎれ、結局最後まで一つずつしか取れませんでした。
 それでも隣で子どもたちが土と格闘し、芋を片手に喜ぶ声を聞くとそれだけで楽しくなりました。子どもたちにとって土に触れ収穫の喜びを味わうことは、食への関心を深め、その大切さを体得するよい機会になり、生きた食育の一環になったと思います。
 昼食はサイボクハムに寄り、バーベキューに舌鼓を打ち胃袋も大満足。日ごろの雑事から解放され、心なごむ一日を過ごしました。
消防博物館見学会
都民クラブ


 秋晴れに恵まれた11月5日、消防博物館の見学会を開催しました=写真。
 参加者は14人、四谷3丁目交差点角に立つ10階建てのビルの最上階は展望休憩室で、左は東京スカイツリーから右は眼下の新宿御苑の森まで眺望絶景。
 6階企画展示室では折から「伊達男・火消姿錦絵展」が開催中で、纏(まとい)を持った当時の人気歌舞伎役者たちの錦絵三十数枚が壁面を飾っていました。
 フロアごとに「江戸の火消し」「消防の変遷」「現代の消防」のテーマで、組織的な消防の誕生から発展を分かりやすく展示。ジオラマによる江戸時代の火消し風景や、大刺股・とび口などの家の破壊道具に驚かされたことでした。
 地階に並ぶ消防車は、大正6年に初めて導入されたものなど名車8台、玄関口で迎えてくれるのは馬牽き蒸気ポンプ。現代のヘリコプターや消防隊の装備に感嘆しつつも、大災害が起こらないようにと願わずにはいられない1日でした。
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