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■2011年10月15日付
大震災テーマに婦人会と交流 第57回指導者研修会
複十字シール運動から女性のライフサイクルまで
 第10回関東甲信越地区結核予防婦人団体幹部研集会
携帯電話のリスク評価 国際ガン研究機関の発表
多摩地区 広がる汚染区域 大気汚染測定カプセル運動報告会
北方四島交流後継者訪問事業 色丹島を訪問して
地域ニュース

■大震災テーマに婦人会と交流 第57回指導者研修会
町の経済に大きな痛手――原発事故の風評被害

気持ち出し合い
 第57回指導者研修会を9月15・16日の両日、福島県東白川郡塙町で1泊2日の日程で開催しました。同町は沿岸部から50キロ、福島原発から直線で70キロ離れた県南に位置しています。役場近くにある社会福祉協議会会館で、塙町婦人会(芳賀とし子会長)と「東日本大震災を経験して」のテーマで、その時の様子や気持ちを出し合いながら交流しました。地震の被害よりも、原発事故で、農産物や観光に頼る町の経済活動が風評被害で大きな打撃を受けたことの方が、強いことが感じられました。翌日は「道の駅」で農産物をたくさん買ってバスに積みました。
がんばろう“はなわ”

塙町町会議員もかけつけて
塙町婦人会のみなさん
 福島県の中通りにある塙町は、総面積の8割を山林が占めています。岩盤が強く山ツツジとダリアの花が咲き、野菜とキノコ類が特産で温泉もある、自然豊かな町です。
 3月11日に襲った震度6強の地震は、家屋の一部損壊や瓦の落下程度で終わり、停電も夕方には復旧しましたが、原発事故の風評被害は、町の経済活動に大きな痛手を与え大変になりました。
 町役場のまち振興課の地域づくり係長の金澤さんは「原発事故で湯遊ランドの予約も、9割がキャンセルされた。これからとれるマツタケの出荷は無理だろう。早場米のセシウムは未検出だったが、これから気になるところ。しかし、シイタケはハウス栽培だから安心。野菜類からはセシウムは検出されていない」と語り、地震、放射能、風評被害から立ち上がるために「がんばろう“はなわ”ビジョン4つの柱」を紹介しました。
 1番にあげたのは「放射線から体を守る」でした。年間被曝量は1ミリシーベルト以下(ICRP基準)をめざし、放射線量を把握し、地域の放射線マップを作成しています。防災協定を結んでいる[飾区や練馬区を中心に、年20回程度物産展を実施しています。
 さらに回数を増やし、都市交流を通じて経済の活性化、風評被害を跳ね返したいと意欲を示しました。
 婦人会からは芳賀会長、副会長ら5人の役員が大震災の体験を語りました。「道路が波打ち、ガラスがゆがみ、車はバウンド、車のガラスがこなごなに散った。瓦がガラガラ落ちる様子を見て、ただごとではないと思った。こんな程度で終わったと安堵したのもつかの間、電気がついて、大津波を知って地震の大きさを知った」

震災の夜、雪が…
「湯遊ランドはなわ」前で記念撮影・朝のラジオ体操
 地震のあった夜のことを「余震が続いて恐かった。珍しく雪が降り、地震が雪を呼んだと思った。寒かった」「娘は避難途中ガソリンが切れ途方に暮れていたら、ボランティアに向かう車の若者から予備のガソリンを分けてもらい、人の絆を感じた」「娘宅は家が半壊し、避難してきている。孫は今でも車で1時間もかけて幼稚園に通っている」「浜通りに住む息子家族が避難してきている。孫は転校して、こちらの学校に通っている」
 湯遊ランドや町の公民館には、原発からの緊急避難者を受け入れました。
 「双葉町のみなさんは、着のみ着のままで避難されてきた。支援物資はたくさんあったが、すぐに必要な下着はなかったので、婦人会で大急ぎで集めて届けた」「県から支援物資は届くが、国からの支援物資はきていない」

公衆電話の役割
塙町婦人会
 「親戚単位の避難なので、お隣やご近所の人たちの避難の様子が分からない。若い人は携帯電話で連絡がつくが、自宅にある固定電話だけでは、避難場所を移動していると連絡が取れず、寂しい思いをしている。『キーステーション』があればという避難した人たちからの声がある」
 震災時電話や、携帯がつながらなかったことに話が進みました。公衆電話は災害などがあったときは、優先してつながるようになっています。
 都心部では500メートル四方に1台、それ以外のところでは1キロ四方に1台の「第1種公衆電話」を設置するよう決められていますが、「塙町の公衆電話がどこにあるか知っていますか」の問いに、みなさん意外と設置場所がすぐには出てきませんでした。
 国では今回の震災時に携帯電話や電話がつながらなかったとこを受けて、大規模災害があったときの通信網について検討がはじまり、東京地婦連はその検討会で意見を述べていることを紹介しました。

目に見えない不安――原発事故をどう思うか

 「原発事故をどう思いますか」と、お互いに述べ合いました。「燃料の車もコンビニの車も隣の町(茨城県)へは入るのに、こちらには来ない。野菜に手を出してくれない。『がんばろう東北』といっても、福島は避けている」「娘は出産で戻ってきて、母乳で育児をしているが、心配だから水を買った。最初はピリピリしていたけれど、町から放射能検査器を借りて測り、大丈夫という確信を持っているが、若い世代は洗濯物を干さない、子どもを外で遊ばせない。目に見えない不安はあるから、長いスパンでそれぞれの考えで行動するしかない」
 原発事故による心配は消えることはありません。その気持ちは東京にいても同じです。「福島の電気は福島では使われていません」と、しみじみ語る婦人会の方に、「福島の原発で恩恵を受け、許してきた自分たちも悔しい思いがする」「無駄な電力を浪費してきた」と反省の声も出ました。
 「生活を見直し、節電を進める」「原発に頼らないエネルギー、地産地消のエネルギーを進めてもらいたい」「福島の農産物を購入することが、支援につながる」と声が出され、「地婦連が手をつないで国や自治体に働きかけていくことが必要ではないか」と交流を深めました。
 私たちの訪問は、ちょうど始まった町議会と重なりましたが、議会終了後、町議会の女性議員や町役場のまち振興課長が駆けつけてくださいました。

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■複十字シール運動から女性のライフサイクルまで
  第10回関東甲信越地区結核予防婦人団体幹部研集会

 10月7日、平成23年度第10回関東甲信越地区結核予防婦人団体幹部研修会が、甲府市で開催されました。関東甲信越地区の結核予防婦人団体幹部や担当者、(財)結核予防会関東甲信越各都県支部職員など110人が参加し、結核予防に関する知識の向上をはかるため「複十字シール運動の歩みと活動」「結核予防とBCGワクチンの接種について」「女性のライフサイクルと健康」の3つの講演がありました。東京地区からは5人が参加しました。
三つの講演

結核予防に関する知識の向上を図るための研修会=10月7日甲府市
 「複十字シール運動の歩みと活動」は、公益財団法人結核予防会事業顧問の山下武子さんが複十字シール募金の益金がフィリピンやザンビアなどアジアやアフリカで途上国の結核対策支援に25・5%使われていることなどを紹介しました。
 結核予防会の基本方針は国際協力だけでなく、「国内ではその時代の国民病に対しても呼吸器疾患、生活習慣病の対策にも仕事の範囲を広げている」と話しました。

罹患率はアメリカの5倍

 「結核予防とBCGワクチンの接種について」は、公益財団法人結核予防会研究所の森亨名誉所長が日本では小さいうちのBCG接種で結核予防をしているが、いまだに中まん延国でアメリカの5倍の罹患率になっている。日本を低まん延国にしていくための努力が必要、と講演しました。
 「女性のライフサイクルと健康」は、鈴木孝太・山梨大学大学院医学工学総合研究部特任准教授。鈴木先生は環境省が行っている「エコチル調査」(子どもの健康と環境に関する全国調査‖赤ちゃんが母体にいる時から13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにする調査)に携わっています。
 女性の体は年代によって変わる、若い人のダイエットはいけないが、中高年になると基礎代謝が下がるから、肥満度は上がります。

身近なところで― 肥満を防ぐ食生活と運動

 肥満予防には食べ過ぎないことと運動。世界各国に出かけることが多い講師は食事を観察すると、その国の風土に合った食べ物、食べ方があることが分かる。日本型食事は肥満を防ぐ食生活だと思う。身近なところで予防はできる。食べ過ぎない肥満の予防が大切と話しました。
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■携帯電話のリスク評価  国際ガン研究機関の発表
 今年5月、国際ガン研究機関(IARC)は、電磁波の中でも「高周波の携帯電話に起因する悪性脳腫瘍(グリオーマ)の発がんリスク」について評価を示しました。その中で、携帯電話による通話により悪性脳腫瘍になる可能性について「限定的ではあるが、グループ2B(発がん性が疑われる)に分類される」ことを発表しています。
「過度の通話は避けよう」

 国際ガン研究機関によれば、「1日30分以上で、通算すると1640時間〜2000時間以上の携帯電話の使用者では、グリオーマの発生リスクが有意に増加していること、実験動物や細胞による研究でも発がんの限定的な弱い証拠があること」などから2Bと評価した模様です。
 これを受けて、各国の研究機関からの見解が続々と発表されています。わが国の国立がんセンターが出した見解では、「通常の通話(多くても1日25分以内)ではグリオーマの報告はないが、過度の通話は避けたほうがいい。とりわけ子どもは成人に比べて携帯電話によるエネルギーの脳への影響が2倍以上という報告もあり、小中学生・高校生の携帯電話の使いすぎは注意すべきである」としています。
 いつの間にか年代を超えて何気なく使うようになった携帯電話ですが、利用のしかたにも注意が必要なわけです。
 グループ2Bといえば、電磁波問題で以前お伝えしたように「送電線など低周波による発がんリスク」も同様に分類されています。高周波・低周波ともに「発がん性については、灰色で問題あり」といえましょう。
 以上、発足後3年を迎える電磁界情報センターの「電磁界に関する最新動向」よりお伝えしました。
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■多摩地区 広がる汚染区域
  大気汚染測定カプセル運動報告会
住民の健康被害も心配 交通規制の強化が必要

 東京地婦連も測定に参加している、6月の大気汚染測定カプセル運動の結果がまとまり、報告会が10月1日に渋谷区商工会館で開催されました。数値は昨年よりかなり高く、これまでの減少傾向から数年の逆戻りとなりました。今回は始終風が弱かったことが影響したとも思われます。
 最初に、東京大気汚染公害裁判原告団の原希世巳弁護士から、環境省調査(※SORA=そらプロジェクロ)でも自動車排ガスとぜんそくの関係が明らかになったことが報告され、長年の原告団の主張が裏付けられたこと、そして東京だけでなく全国のぜんそく患者の救済実現が求められている現状であることなどの問題提起があり、測定結果の報告に入りました。
 6月2日から3日にかけては雨降りで、カプセルの取り付けに苦労された方が多かったと思われますが、有効測定数は1万909個でした。全都の平均NO2濃度は0.035ppmで、23区内は平均0.038ppm、多摩地区では0.031ppmという結果です。昨年6月の全都平均が0.026ppmでしたから、この後退ぶりは残念です。東京地婦連の会員が調査した地点でも、数値は前年より高い平均値となっていました(別表)。
 地域別のワーストワンは、23区では目黒区で0.046ppm、次いで江東区の0.045ppm、千代田区の0.044ppmが3位でした。汚染度が高く、住民への健康被害が懸念されます。夜間の大型貨物車の交通制限など、交通規制の強化が必要でしょう。
 一方多摩地区では、西東京市が0.038ppmで初めてのワーストワン、次いで調布市が0・037ppm、国立市が0.036ppmでした。道路建設など環境変化により、自動車排ガスに起因する大気汚染地域は拡大しています。
 測定点の道路区分では、自動車の走行量の多い幹線道路沿いで平均0.042ppm、次いでその他の道路沿いが0.033ppm、道路以外では0.029ppmでした。
 最高濃度地点のNO2の数値の高さには愕然とするばかりですが、目黒区青葉台2‐21の山手通りに面した量販店の駐車場が0.094ppmでワーストワン、第2位は文京区本郷2‐28の0.087ppmでした。
 多摩地区では、調布市の調布インター近くの甲州街道沿いの下石原1‐16で0.087ppm、小金井市貫井トンネル内で0.086ppmを記録しました。これらの地点を含めて「大変よごれている」と判断される0.061ppm以上の地点を合計すると23区では220カ所、多摩地区で54カ所に上ります。
 すでに役所に働きかけている地域もあるようですが、具体的な対策に向けた取り組みが大切でしょう。なお12月のカプセル測定は1日から2日に予定されています。

そらプロジェクト=自動車排出ガスと呼吸器疾患との関連についての研究調査の頭文字。平成17年度から21年度まで関東、中京、関西の3大都市圏の主要幹線道路沿い住民を対象に行った大規模な疫学調査。対象世代のうち学童調査ではECおよびNOX推計曝露量を指標とした自動車排出ガスへの曝露とぜん息発症との間に関連性が認められた。
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■北方四島交流後継者訪問事業  色丹島を訪問して
異なる文化でも共感し合える

 (独)北方領土問題対策協会が実施する、平成23年度北方四島交流後継者訪問事業に、北方領土を返還する都民会議の推薦で、東京地婦連役員のお孫さんにあたる大学生の雑賀直己さんに、9月16日から19日の色丹島の訪問事業に参加してもらいました。解決の道筋がいまだ見えない中で、返還運動には若い世代の関心が大事です。今回の訪問団員は、40歳未満を対象にした後継者訪問事業でした。雑賀さんの報告です。
ホームビジットの記念写真。右側が筆者
最終日のお別れ会では島の若者と食事をし、ゲームをして交流を深めた
港にはさびた船が放置され、海水は濁り異臭が漂う
放置された古い建物(手前)と新しい建物(奥)。古い建物の屋根には穴が開き、壁はつぎはぎだらけ=色丹島
 船は根室の港を出た。停泊している船は少なく、見晴らしのよい小さな港だった。根室市長や市民のみなさんに激励の言葉をいただき、手を振られながら船は色丹島へ向かった。海ではイルカたちが自由に泳ぎ回る姿があった。北海道の海の豊かさを見ることができた。
 船は色丹島へ行く前に、国後島へ寄る。国後島で入域審査を受けるためである。入域審査では訪問団員一同が一室に集められ、ロシア警備隊監視の下で点呼をするものだった。
 団員番号と名前を呼ばれたら、返事とともに手を上げるのである。点呼を取っていた警備隊の青年は、その端正な顔立ちのまま表情を変えることなく、淡々とこの作業をこなした。
 冷たさを感じた。重々しい空気が団員を包んだ。「君たちはわれわれの監視下にある」と態度によって語っているようであった。
 これからロシア人の住む島へ向かう身としては、少し不安になった。受け入れられざる者、われわれはそんな印象を持たれている気がしてならなかった。その日の夜、船は色丹島へ到着、翌朝上陸した。

生活基盤整備の遅れ
 四島の中ではまだ開発が進んでいないこの島は、近年のロシア政府による発展計画で、小学校などの新たな公共施設が建ち、またPCなどの最新の電気機器の設備が充実し始めていた。
 一方で舗装されている道路はほとんどなく、砂利すら敷かれていない道もあり、雨が降った2日目の車での移動は泥だらけになった。車は船よりも揺れた。僕が見た乗用車の全てが古い日本車であった。
 また生活水を循環させる設備がなく、水は海へ垂れ流しの状態であるため、港は異臭が漂っていた。循環設備の設置は計画段階であり、具体的な決定はないようであった。本来、自然豊かなはずのこの島が、このような状態にあり残念に思った。

友好的だった島民
 しかし、島民の方は非常に友好的であった。僕が訪問をさせていただいた家庭は、老夫婦と16歳の娘さんがいる家庭だ。彼らは日本の文化を愛してくれていた。ご夫婦で広島へ行かれたときの写真を見せてくれ、日本語まで勉強しておられた。「ありがとう」「こんにちは」しかロシア語を話せない僕は、恥ずかしくなった。
 奥さんが手料理でもてなしてくださった。食卓のロシア人はたいへん陽気であることを知った。一回の食事で何度も乾杯をする。食事が終わるまで乾杯は続く。「友情のために!」「日本のために!」と言って乾杯をしてくれた彼らに、僕たちは「ご主人のために!」「奥さんのために!」「この出会いに!」と言って、これに応えた。
 食事の後はピアノを弾き合ったり、流行の音楽について話したり、ご主人が独自の哲学を語ってくれたり、温かい時間が流れた。
 国同士がにらみ合うことで、理解が深まることはない。異なる文化においても共感し合えるという実感が、互いの歩み寄りにつながっていくのではないだろうか。
 このような貴重な機会を与えていただいたことに心から感謝します。
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■地域ニュース
自助、共助、公助
わか草婦人会


 9月28日午後7時から、南綾瀬地区センターで、防災についての講演会を開催しました=写真。
 お話は葛飾区村杉防災係長です。青木区長、山口地域振興部長、利谷防災課長も駆けつけてくださいました。参加者は80人余でした。
 はじめに3月11日の東日本大震災への区の対応は、帰宅困難者や福島からの避難者30世帯を受け入れたこと、金町水道水からの放射能検出、災害協定都市への支援や義援金寄託、区内数カ所の放射能測定など、区の対応が早急に行われ、被災地の方々にとても喜ばれた様子を聞き、私は区民として行政の働きをうれしく思いました。
 もし東京湾北部でマグニチュード7・3の地震が発生した場合、区内のライフラインの被害は大きく、18万5000人が避難生活、死者も700人くらい出てしまうそうです。
 地震に対する家庭の備えは、自分で自分の身を守る自助、お互いに助け合いながら自分たちの身を守る共助、防災関係機関が防災活動を行う公助です。自助、共助、公助の3つの力(助け)がそろわないと災害に立ち向かうことができないそうです。
 大地震発生時の自助のポイントは(1)身を守る(2)火の始末(3)出口の確保(4)地域にとどまる(5)家族間の連絡、そして、「3日分の食料と飲料水が必要です」と分かりやすく話され、参加者全員が熱心に聞き入って時間の経つのも忘れ、9時に終了しました。
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