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お詫び
婦人時報4月号は、新型コロナウイルス感染症の影響により休刊いたしました。

■2020年6月15日付
北方領土の早期返還を求めて
第五福竜丸エンジンとサトザクラ
照射ジャガイモの監視から
次亜塩素酸水のミスト噴霧にご用心を
感染症・地域医療への危機管理を
地域ニュース
生団連 課題別委員会報告


■北方領土の早期返還を求めて
挨拶する安倍晋三首相
令和2年 北方領土返還要求 全国大会開かれる

 2月7日は北方領土の日です。この日、北方領土返還要求全国大会が東京千代田区の国立劇場で開かれました。
 会場には、返還要求運動を進める全地婦連、市民団体、内閣府、総理大臣、外務大臣、政党代表議員や元島民など全国から1600名が集い、北方領土の早期返還を求める固い決意を内外に表明しました。
 第1部では、北方領土問題の学識研究者でNHK解説委員の石川一洋氏、北の海の動物センター理事本間浩昭氏、元島民国後島三世の西田裕希さんがそれぞれの立場から話されました。
 本間さんは「動物はザトウクジラ、エトピリカ、ラッコ、また沖アミにむらがるクマなど、植物も春から秋にかけて花々が次つぎと咲き乱れます。観光事業も始まっているのでぜひ目で見てください」、元島民三世の西田さんは「若い世代を含めてもっと知ってもらいたい。北方領土というと、恐い、難しい、と思われているが、分かってもらいたいと思う」と話しました。また「環境保護の観点から、エコツアーが実現すれば身近に感じることができるのでは」と新たなアプローチを提案しました。
 第2部の式典で安倍内閣総理大臣は、「これまで解決に向けて着実に交渉を続けてきた。2016年の首脳会談で、航空機による墓参りを3年連続で実施、四島の経済活動、ごみ処理の分野など双方の受けられる解決策を精力的に進め、平和条約を加速させる方針を確認した。国民一人ひとりが領土問題の解決と平和条約に向けて理解を深め、一丸となって進んでいきたい」と力強く挨拶しました。
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■第五福竜丸エンジンとサトザクラ
昨年10月に植樹されたサトザクラ
第五福竜丸のエンジンとサトザクラ
 第五福竜丸展示館の前庭に、昨年10月に植えられたサトザクラは、3月下旬に紅色の花をいっぱいに開花させ、青空に映えて揺れています。
 東京地婦連創立70周年記念のこの桜には、「平和を祈念して…第五福竜丸と平和な航海を」と標柱に刻まれています。
 第五福竜丸のエンジンが船のもとに戻り、展示公開されたのは2000年の1月でした。平和を願い第五福竜丸の航海を応援する市民団体、東京の原爆被爆者の会・東友会、東京地婦連、東京都生協連、主婦連合会、東京都地域消費者団体連合、青年団、東京原水協などが協力して和歌山県からエンジンをリレーして運び、東京都がこの取り組みを受けとめて、エンジンの設置を実現させました。
 それから今年で20年です。エンジンは28年間海中に没していたため劣化がひどく、都による応急処理はなされたものの、年々表面が錆びて剥離してきています。第五福竜丸同様、核兵器も戦争もない平和な世界をねがい、市民の手で遺された『平和遺産』を長く守りたいと、エンジンの運動を記念した八重紅大島桜とともにサトザクラを見上げます。
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■照射ジャガイモの監視から
 ガンマ線を照射して発芽を止める士幌農協の「照射ジャガイモ」は、食品衛生法で例外的に認められており、端境期といわれる2月〜5月頃に出回ることがあります。
 芽止めジャガは、放射線照射により発がん促進物質を生じる懸念や、照射後約3か月は放射能を帯びている恐れがあり、全国の50余りの団体・個人で構成する「照射食品反対連絡会」では、かねてより監視活動を継続しています。
 今年も4月下旬に、会員から都内(中葛西)の八百屋と食品スーパーで販売されていたとの通報があり、連絡会からは二店の店長に対して、直ちに販売中止を申し入れました。
 国内ではすでにジャガイモの保管、倉庫から店先に至る低温流通の技術は確立しており、品薄になりがちとされる端境期自体がほとんどない、といわれています。
 昨今の士幌の放射線照射施設の役割とは何でしょうか。士幌農協では、具体的には照射ジャガイモの生産・出荷状況などについて、情報を公開していません。
 しかし連絡会では監視調査により、照射されて間もなく店先に並べられる、芽止めジャガが増えていることを把握しています。
 今回の2件の事例も、2月15日に照射されたもの(写真)が、照射後2カ月余りで4月に販売されており、安全性が問われています。
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■次亜塩素酸水のミスト噴霧にご用心を
 次亜塩素酸水とは、塩酸や食塩水を電気分解して作る水溶液です。
 空気中の新型コロナウイルスの消毒効果を期待して、学校や保育園、公共施設、飲食店、バス、タクシーなどに次亜塩素酸水の噴霧器を設置するケースについて、製品評価技術基盤機構(NITE)は、「消毒液噴霧による人体への安全性の評価方法は確立されていない」「国際的にも消毒液の噴霧は推奨されていない」と警鐘を鳴らしています。
 また、厚生労働省の結核感染症課では、「もし物に対する効果があるとしても、噴霧は感染予防には役立たず、吸い込むと濃度など条件次第では、有害になりうるので使用をやめてほしい」としています。経済産業省は次亜塩素酸水の効果について、「検証中であり近いうちに結果を公表する」そうです。

コロナ禍に付け入る悪質な消毒液類の高値転売

 最近ようやくマスクは店先に並ぶようになり、値崩れも見られますが、消毒用アルコールや消毒液類は不足しています。「マスクの次は消毒液だ」とばかりに、消毒に適さない粗悪品が、出回っています。この様な高値転売業者は後を絶ちません。第3類医薬品か医薬部外品の表示を確認し、適正価格で購入しましょう。
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■感染症・地域医療への危機管理を
 東京での感染拡大は止まず、アラートに続くクラスターの発生。重症リスクの高い患者や高齢者は必要な診察を控え、感染に怯えながら、4カ月近くの巣ごもり生活を余儀なくされています。
 新型コロナウイルスのまん延による世界的な大惨事は、止まるところを知りません。日本ではクラスター対応や、軽症者隔離用ベッドを用意する措置、医療関係者の尽力などにより、死者数は欧米より少なめですが、今なお重症者も多数おられ、薄氷を踏む思いが続いています。
 私たちは、マスク不足、検査体制の不備、何度も何度もかけても繋がらない相談窓口、ベッド数、防護服や消毒薬、医療資材などの不足、医療従事者不足、院内感染、介護施設等での感染、保健所の疲弊、さらには救急患者のたらい回しなど、国や自治体の感染症への危機管理が問われる数々の状況を、目の当たりにしてきました。
 その上新型コロナの影響からか、日本医師会はじめ関係団体が相次いで、病院・診療所の経営危機を表明しています。何としても身近な医療機関の閉鎖の防止、そして医療の質の低下を招かないように、未来志向の対策を願うばかりです。
 私たちの暮らしに大切な「地域の医療」を後退させてはならず、「感染症への危機管理」と地域住民の受診体制を表裏一体と捉えた、両面作戦が不可欠でしょう。
 東京都にはこれを機に新型コロナはもとより、これ以外の感染症への危機管理対策とともに、揺らぐ地域医療の立て直しを急いで頂きたいものです。
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■地域ニュース
地域活動が止まって
わか草婦人会


 皆さま、いかがお過ごしでしょうか。思いもよらないこの度の新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、本当に不安な毎日です。本当に困ったことです。
 私たちの地域の事業も全部中止。5月の消費者の日のイベントは、毒蝮三太夫先生に講義を依頼してあったのですが、残念ながら中止。自治連合会の運動会、町内のふれ合い広場、年1回の行事もできません。学校教育も再開の流れですが、放課後に行う「わくチャレ事業」は子どもに接することもできず、開催の目途がつきません。
 緊急事態宣言が解除され、生活も少しずつ戻ってきたようですが、油断は許せません。再度の流行が心配です。
 私たち高齢の地婦連のメンバーも、特に健康に注意しながらも感染しないよう気を付けていかなくてはいけません。
 諸事業ができないことは寂しいことですね。地域活動ができないと、生きがいもなくなります。何とか1日も早く、安心して生活ができるよう願っています。
 6月より一歩ずつできることからやっていこうと思っていますが、皆さまも諦めることなく、希望を忘れることなく頑張っていきましょう。外出時は特に気をつけて行動を、自己防衛に厳しく取り組みましょう。
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■生団連 課題別委員会報告
 国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)が2月に開催した、3つの課題別委員会について、参加者からの報告です。
新・防災対策委員会

 第3回新・防災対策委員会が、2月18日にTKPカンファレンスPREMIUM京橋ホールにて開催されました。
 「生団連災害支援スキーム」について報告がありました。「生団連災害支援スキーム」とは、生団連会員を中心とするネットワークをもって得た正確な情報を、実際の支援に繋げるスキームです。
 参加する会員団体からは、NPO法人ピース・ウィンズジャパン(PWJ)の会沢裕貴さんが、ヘリコプターでの捜索・救助支援、専属の医師による医療支援、被災者の生活支援を行っていること。一般社団法人ピースボート災害支援センター(PBV)上島安裕事務局長・理事は、”人こそが人を支援できる”、災害時に動ける人材を育てておくことが必要。東日本大震災でも行政職員の人手不足があり物資の分配にも影響がでているので、そういったところに団体が入って、ヒアリングなどを行いながら、ニーズを集めて災害対策本部にあげていることが報告されました。
 東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター宇田川真之特任助教の講演「我が国の救助物資対策の現状」では、発災初期、応急期、プレ復旧期とフェーズごとに適した支援の方法がある。企業や個人によるボランタリーな義援物資は、個別の事情に応じた支援として重要。現在は首都直下地震の具体的な応急対策活動の計画をしていると話されました。
 今後の取り組みとして、JPFとの協力体制の構築、中長期的課題としてのシステム活用や物流改善に向けた情報収集を進めていくと話がありました。


国家財政の見える化委員会

 今回は「わが国の財政の諸課題とその処方箋」と題する、慶応大教授土居丈朗氏の講演の中から、今後のわが国の財政運営の展望について紹介します。
 土居先生は、「予算の無駄をなくす歳出改革とともに、税制は日本経済の行く末を決める一つの重要な要素である」として、まず税制から話されました。
 消費税は「効率的」な面があるが、所得税のような「公平性」は実現出来ない。そこで国家財政に必要な税収を確保するためには、効率性と公平性のどちらをどれだけ重視し、課税するかを判断することになる。低所得者対策には、消費税の軽減税率よりも所得税の給付つき税額控除の方が有効である、などと説明されました。
 続いて「度の過ぎた裁量の補正予算」に歯止めをかける改革。予算編成は現在のように1年ごとに行うのではなく、3年程度(複数年度)の中期的な予算編成にすることに賛成、と生団連に近い意見を表明されました。
 経済成長の見通しについては、予測が甘く楽観的になりがちであり、国の財政統制のためには地方財政を正確に把握する必要がある、と指摘しています。
 また政策目標の設定は具体的なものでなければ意味がない。政策が予算通りに執行されたかどうか、評価と見直しをしっかり行うことが予算の無駄遣いの抑制になる、と不断の努力の大切さを説かれました。


エネルギー・原発問題委員会

 東京財団政策研究所の平沼光氏の講演、「世界で進むエネルギー転換と日本のエネルギー政策」から報告します。
 特に「2040年の電力構成に占める再生可能エネルギーは約60%」という国際エネルギー機関のシナリオとともに、日本の石炭をめぐる政策目標の立ち遅れを指摘され、開発・導入の進む欧州の高度なエネルギーマネジメントなど、先進的な3タイプの事例について紹介されました。
 1 発電、送電、消費をインターネットでつなぎ、電力需給データ、気象データを人工知能で分析・制御を行い、再生可能エネルギーを最大限に導入する実験。
 2 再生可能エネルギーを活用した電気自動車を電力系統と結んで、マイカーなどが電力の安定化の役割を担い、消費者の電気料金の負担軽減を目指す、車とエネルギーシステムの融合例。
 3 太陽光発電などを行う地域住民が主体となり、再生可能エネルギーを担うドイツの「シュタットベルケ」、そこに自治体が出資し、幅広い公共サービスを行う社会の新しい姿。参加者一同注目です。
 さらに平沼先生は、世界の電源別の発電コストは高い方から原子力が1位、次いで石炭、最も安いのは陸上風力であるとの分析を示し、わが国の自治体、企業に広がる自然エネルギー普及拡大の様々な動きを説明しました。
 最後にエネルギー転換を進めるポイントについて「日本は今後、浮体式の洋上風力発電を地域主体の事業として普及促進させることではないか」と締めくくられました。
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