2006年総会を終えて 会長のあいさつ

平和と自由を、この手で守る
憂慮される国民の基本的権利侵害


ご近所との人間関係を回復し、深める活動
 中心テーマ「個の力、地域の絆で暮らしをまもる」をかかげて二年目を迎え、地域の絆が希薄になりつつあるこの大都市の中で、あえて問題に取り組みます。ご近所との関係を回復し、深めていき、ここから地婦連の本来の姿をいきいきと浮かび上がらせ、私たちの求める平和と自由、安心と安全な街づくりを構築していきたいと切に願っております。
 そのための、地域の人びとの意識の高まりをどう育てるかは、会員一人ひとりの役割となりましょう。
 皆さまもお気づきのように、現在この国はますます息苦しさを増しています。医療・介護保険料の値上げ、反して給付サービスの低下、老後の頼りである年金も、さまざまな不祥事で枠組みがゆらいでいます。
 何よりも憂慮されるのは、もちろん国民の基本的権利であり、財産であるべき現憲法が危機に直面している事実です。教育基本法・少年法の改正でもしかり、共謀罪にいたっては、まるで戦前にかえったようで恐怖さえ覚えます。この国はどこへ行こうとしているのでしょうか。
 昭和十年代、谷崎潤一郎初訳の「源氏物語」が出版され、当時十代の私は、美しい和とじの本を宝物のように読んだことでした。この訳が、当時の軍国主義の時代背景の中でズタズタに削除されたことは、あまりにも有名な話ですが、作者紫式部が言わんとした主要テーマ、「源氏と父后藤壷との悲恋と苦悩、二人の間の子冷泉帝の即位による父子二代にわたる苦しみ」などが、すっかり削られたことでした。
 この事実は、古典文学、ひろくは日本の芸術文化に対する重大な冒とくで、このようなひどいことを当時の国粋主義者の学者の圧力で、当の訳者も出版社も結果的に受け入れてしまったのでした。
 この事件が氷山の一角であったあの時代、言論の自由も表現の自由も、戦争という巨大な渦の中に消えていきました。現在の自由な社会を当然と思っている若者たちは、もしこのような圧力や制約が心の中まで踏み込んできたなら、どんなにか戸惑うことでしょう。
 私たちは地域の中で環境、福祉、教育、消費生活などの諸問題に取り組んで活動しています。そしてまた、視野を世界にむけ、世界の中でのこの国のあり方を客観的に把握する活動をしております。それは真に公正で公平な、調和のとれた社会の実現のためのものです。
 現在のこの六一年間の奇跡ともいうべき平和と自由の時代のありがたさを、もう一度わが手につかみ、わが胸に刻んで本年度の活動の第一歩を踏み出してください。

川島 霞子